wacky mathematics
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(40)組み合わせ表
2008.11.4 08:09
プロ野球のペナントレースで、どのチームにも日程的に有利、不利のない対戦表を作成するのは意外と難しいものです。しかし、数学の理論を駆使すれば、首尾良く対戦表をつくれます。そのような2例を紹介しましょう。
将棋部の6人の生徒が5日間にわたって、将棋の対戦を行うとしましょう。どの生徒も各日1人の相手を選び、対戦します。5日間、どの生徒も自分以外のすべての部員と対戦する組み合わせ表を作るには次のようにすればよいのです。
各日、6人の生徒が2人ずつペアを組み、3組に分かれて対戦することになります。そこで、6人の生徒に1~6まで番号を振り分け、おのおのを白点で表し、円周の5等分点にそれぞれ1~5を、また、中心を6とします。次に、対戦する2人を表す点同士を線分で結びます。図1(a)は、1と6、2と5、3と4がペアを組んだことを意味します。例えば、この組み合わせを1日目の対戦表とし、2日目は、1日目の対戦表を1/5周だけ回転させます=図1(b)。3回目以降も同様に前日の対戦表を1/5周だけ回転すれば、ニーズをみたす5日間の対戦表を作ることができます=表。
次に、19世紀半ばに英国の数学者、カークマンが提起した有名な問題について考えてみましょう。
「あるクラスに15人の生徒がいる。このクラスは、毎日、3人ずつで1組の班を作り、全員で野外の観察に出かける。以後7日間、毎日、一度同じ班になったどの2人も二度と同じ班に入らないように班分けするには、どのようにしたらよいか」
先ほどと同様に、15人の生徒をそれぞれ点で表し、図2のように二重の同心円周上にそれぞれ7点ずつ、中心(15)に1点、合計15点を配置します。次に、15点を4個の三角形と1つの3点から成る線分に分割します。このように分割すると、1/7周ずつ回転しても、元の位置に戻るまで同じ線分が現れることはありません。よって、図2の同じ三角形または線分に属する3点を1班とみなすことにより、15人の1日分の班分けができ、さらに、この図を1/7周ずつ回転することにより、7日分の班分けが求められます。(東海大教育開発研究所長)
(39)監視カメラの有効な設置方法とは
2008.10.28 08:17
最近、マンションやショッピングセンターなどで監視カメラの設置が増えてきています。防犯のため、不審者の出入りをチェックし、他人から見えない死角をなくすためには監視カメラを設置することが有効ですが、設置には経費もかかります。そこで、「なるべく少ない監視カメラで、店内全体を見渡せるようにするためにはどうすればよいか」を論じた数学の理論があります。
図1は、ある店の平面図です。この九角形のいくつかの隅(頂点)に監視カメラを設置して、店内のどの場所も見渡せるようにしたいとします。監視カメラは360度回転し、遮る壁がない限り、どの地点も監視できるものとします。例えば、頂点Aにカメラを設置すれば、図1の色のついた部分を監視できます。この平面図をもつ店では、カメラ2台をどの頂点に設置したとしても死角が生じてしまいます。しかし、例えば、3つの頂点B、D、Gの位置に1台ずつカメラを設置すれば、店内全体を見渡すことができます。
実は、「どんな複雑な形をした店でも、その平面図がn角形ならば、たかだかn/3台(割り切れないときは小数点以下を切り捨てる)のカメラを適切な位置に設置しさえすれば、店内全体を見渡すことができる」ということを証明する定理があります。証明の骨子は次の通りです。
(1)n角形Pの頂点同士を線分で結び(図2の点線)、Pの内部を三角形に分割する(合計n-2個の三角形に分割される)。
(2)n-2個の三角形のいずれについても、その3頂点が異なる色(すなわち、点線、実線の両端点が異色)になるように、赤、青、黄の3色いずれかの色でn個の頂点すべてに色をつける。
(3)赤、青、黄のそれぞれの出現回数を数え、その回数が一番少ない色のついた頂点にカメラを設置する。
図2の十二角形の場合、黄色が3回で最少です。一般に最少の出現回数は、平均の出現回数であるn/3以下である。よって、黄色の頂点にカメラを設置すれば全体が見渡せることになります。(東海大教育開発研究所長)
(38)とっても便利な三角形
2008.10.21 08:04
世界のナベアツのおかげで3の倍数は一躍脚光を浴びましたが、三角形の方はその実力のわりに注目度はイマイチです。そこで今回は、三角形が他の図形、特に多角形の基本になっていることを紹介しましょう。
三角形と一言でいっても、千差万別、無数に異なる形がありますが、どの3角形でもその3つの角を寄せ集めれば、例外なく180度になることは周知の事実です。この性質から、どんな形の三角形もその形のコピーをたくさん使って、平面を敷きすき間なく詰めることができます。
ここで、三角形の面積の復習をしておきましょう。同じ形の三角形を2つ合わせると、平行四辺形になります。平行四辺形の面積=底辺×高さだから、三角形の面積はその半分、すなわち底辺×高さ÷2です。
この事実を使えば、どんな多角形、例えば四角形、五角形、六角形…も、それらの内角の和や面積を簡単に求めることができます。そのためには、多角形に対角線を引いて、いくつかの三角形に分解すればよいのです。
例えば、図2の十角形は頂点同士を結ぶ対角線(図2の波線)を勝手に引くことによって、8個の三角形に分割できます。一般に、どんなn角形も対角線を引いて、ちょうどn-2個の三角形に分解できます。このことから、n角形の内角の合計は180度×(n-2)であることが分ります。一方、n-2個の三角形それぞれの面積が求められるので、それらをすべて加え合わせれば、どんなn角形の面積も求めることができます。それどころか、円を直角三角形に変身させ、円の面積を求めることもできます。
図3のように、半径rとする円を何重もの布で巻いた年輪状の物体と見なします。中心から直下に切り込みを入れ、点Pの左側部分を時計回りに大きく移動させ、点Pを点P′に移します。するとこの円は、底辺PP′=2πr、高さ=rの直角三角形に変身します。このことから、円の面積の公式π●=2πr×r÷2が導けるのです。(東海大教育開発研究所長)
●=rの二乗
(37)球の詰め込み
2008.10.7 08:21
「横5センチ、縦8センチの長方形の中に、直径1センチの円を最大何個詰め込むことができるか」。これは、1950年代に出版されたパズルの本にも載っている問題です。図1のように規則正しく詰め込むと40個です。ところが、図2のようにすれば、円は41個詰め込めます。図1では円の中心が正方形状に並ぶ配置をしています。一方、図2では円の中心が正三角形状に並ぶ配置になっています。実は、“円の中心が正三角形状に並ぶ配置”が、円を一番効率的に詰め込む方法だということが20世紀前半に証明されているのです。
これを3次元(空間)に拡張すると、「同じ大きさの球を空間に詰め込むための最密な配置は何か」という問題になります。この問題について、ドイツの天文学者、ケプラーが「どの球の周りにも12個の球が囲む配置で空間を埋め尽くした場合が答えだ」と1611年の冊子に、証明を書かずに記述しました。ケプラーはザクロの種子の観察によってヒントを得たそうです。
ザクロの実の中にたくさん入っている種子は、球形をした小さい種子が大きくなるにつれ、互いに押し合いへし合いを始めます。その結果、最密な状態をつくり1個の種が12個に囲まれる配置になったというのです。すなわち、図3で、1個の球の周りに6個の球が取り囲み、さらに上下から3カ所のくぼみに球が入り込んだ配置となっています。
この主張が正しいか否かをめぐって、その後400年近く、数学者たちの挑戦が続きました。ついに1998年、米国のヘールズによって、コンピューターで調べあげるという力ずくの方法で、ケプラーの主張が正しいことが証明されました。
“限られた空間にできるだけたくさんのものを詰め込む”という最密充填(じゅうてん)問題の応用が、各分野で研究されています。特に、通信分野では顕著でした。例えば、ひとつの信号をある空間の中の1点で表せるとしましょう。信号同士の距離が近いと誤読率が高まります。信号の誤読率を低く抑えるために信号の間隔が最低1ミリ必要だとしましょう。すると、“1辺10センチの立方体にできるだけ多くの信号を表す点を配置する”問題は、この立方体に直径1ミリの球をなるべく多く詰め込む”という数学上の問題に置き換えられます。
現在、3次元どころか、もっと高い次元において球の詰め込み問題が研究され、通信工学の分野で著しい成果が上げられています。(東海大教育開発研究所長)
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