(1) 視聴率とスープの味見
かつては、フーテンの寅さんを映画館に観に行くことから私の正月は始まった。寅さん亡き後は、箱根駅伝を応援し、「志の輔らくご」を渋谷パルコに聞きに行くのが恒例になった。視聴率改竄(かいざん)事件が勃発(ぼっぱつ)し、それが社会問題になっていた何年か前、その落語会の枕の話の中に、なんと私が登場したことがある。その下りは、「『ところで、視聴率なんてもんは、数千万世帯のうちのたった千世帯ぐらいしか調査していないんだから、あんまり当てになりませんよね。こんな数字に一喜一憂することはないんじゃないですか』ってなことを、テレビ局の楽屋で仲間たちと話してたら、突然、秋山仁が現れた。そして、こう言うんですよ。『そんなことはない。視聴率ってどういうものかってことを簡単に言うと、ホテルのコックさんが、スープを味見するとき、大鍋の中のスープを全部飲んで苦いとか薄いとか…と調べるわけじゃないでしょう? コックさんは大鍋の中のスープをかき混ぜた後、スプーンたった一杯を試飲するだけで、全体の味を十分チェックできるでしょ。いくら心配性なコックさんだって、大鍋一杯飲みほして味見しているなんて聞いたことないよね。だって、全部飲んじゃったら客に出すスープが無くなっちゃうじゃない。これと視聴率の原理は同じなんだ』とさ」。すると、聴衆は視聴率が大変信頼性の高いもんだと合点したみたいで、客席がどっとわいた。
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