大工さんはいろいろな技を持っています。そのひとつに、木に丸や四角い穴を開けたり、溝を彫ったりする技術があります。「彫り3年」といって、相当な修業を積まない限り修得できないものです。しかし最近、種々の電動工具などが開発され、大幅に手間暇が省けるようになったそうです。
バミューダコイン=写真1=を見たことがありますか。このおにぎり形を正確には「ルーロの三角形」といいます。このコインを適当な大きさの正方形の枠の中に入れると、コインが4辺のいずれにも接し、かつ接点が正方形の角付近を除くすべての点に接したまま回転させることができます。よって、このおにぎり形をベースとした刃を正方形枠の中で回転させると、ほぼ正方形の穴が開くのです。ここで、注意すべきことは、回転軸は固定せず、ユニバーサル・ジョイント(自在に操れる継ぎ手)を用い、微妙に動けるようにしてあることです。同様な原理で、正六角形の穴もルーロの五角形をベースにした刃をもつドリルで開けられます。
しかし、ルーロの多角形は奇数個の辺をもつ多角形を基本としているので、この方針では正三角形や正五角形の穴を開けるドリルは作れませんでした。最近になって、NPO法人科学協力学際センターの川添良幸代表理事や佐藤郁郎氏、東北大学金属材料研究所の臼井和也氏らと協力して、正三角形の穴を開けるドリルを試作しました(手前は開けられた正三角形の穴)=写真2。
これは、ヒューゴ・ステインハウス著『Mathematical Snapshot』(1938年)に紹介されていますが、「正三角形Tの枠の中で、Tの高さを半径とする2つの円弧を抱き合わせたレンズのような形(藤原・掛谷の二角形)がTの三辺のいずれとも接したまま回転できる」=図=という原理を応用したのです。このように科学、技術は日進月歩ですが、そのうちに星形の穴が開く回転ドリルが出現するかもしれません。 (東海大教育開発研究所長)
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