2014年10月26日日曜日

(7)錠剤シートの切り分け回数

 最近、栄養剤やビタミン剤を何種類も毎朝晩、常用しています。忘れないように各回にとる分だけを小袋に小分けにしておくのですが、その作業に意外と時間がかかります。特に、錠剤シートを1つずつの小片にバラすのが面倒。そこで今回は、錠剤シートや板チョコの分断に関する数理について考えてみましょう。
 たとえば図(a)のように、縦に2個、横に3個の合計6個の錠剤が並んで入っているシートがあったとします。このシートには縦、横に分断しやすくするためのミシン目が入っていて、それに沿って折ると二分されます。ここでは、重ね折りやミシン目の途中で折るのをやめることはできないものとします。
 さて、6個の錠剤をバラバラにするのに、合計何回折ればよいのでしょうか?
 まず、ミシン目リットルに沿って折り、その結果得られる1×3の2枚の断片のそれぞれをm、nに沿って4回折ります〈図(b)~(f)〉。すなわち、5回折ったことになります。
 別の折り方として、まず、mに沿って、次にnに沿って折ると3つの2×1の断片に分かれます。そのおのおのをリットルに沿って折ると、バラバラになるまで折った回数の合計はやはり5回になります。その他、いろいろな折り方が考えられますが、そのいずれの方法でも合計5回折ることに気づきます。その理由を考えてみましょう。
着目すべき点は1回折ると断片の総数が1つだけ増える。すなわち1回折ることと、断片が1個増えることが1対1に対応しているのです。この事実は、どのような折り方をしようとも、また、分断を行っているどの段階でも成り立ちます。折り方によらず、最初、1個だった断片(シートそのもの)が、最終的に6個の断片に分けられるのだから、折った回数は合計6-1=5回である。このように1対1に対応をつけて考えると便利な例をもうひとつ示してみましょう。
 夏の高校野球には、全部で49校が出場します。優勝決定までに、全部で何試合行われるでしょうか?(ただし、引き分け再試合はないものとします) 「1回試合すると、1校が敗退する」。すなわち、ひとつの試合に対し、ひとつの敗退校が1対1に対応していることを見抜けば、全部で48(=49-1)試合が行われることに気づきます。

 20世紀の偉大な数学者ポール・エルデスは、家庭も定職も持たず、サンダル履きでバッグひとつぶらさげて世界各地を放浪し、各地の研究者と共同で多くの素晴らしい論文を残しました。バッグの中は健康を維持するための錠剤が山のように入っていたことを、この原稿を書きながら、ふと思い出しました。

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