2014年10月26日日曜日

(29)世界が認めた折り紙の幾何学

折り紙は日本の伝統文化のひとつです。鶴などを、いとも簡単に折る日本人を見て、大抵の外国人はその幾何学的なセンスに驚嘆します。長い間、折り紙は遊びの範疇(はんちゅう)とみられていましたが、最近になって実生活でもいろいろな応用があることが知られ、盛んに研究されています。たとえば、「パラシュートをどのように折り畳んでおけば、落下途中で絡まないか」「車に搭載されているエアバッグの畳み方」「回収に便利な折り畳み式のペットボトルの設計」など、枚挙に暇(いとま)がありません。実際、日本応用数理学会に『折り紙工学』の研究部会が創設されたりもしています。
 今から10年ほど前、離散幾何学の国際会議を東海大学で開催しました。その際、18歳のカナダの大学院生、エリック・ドメイン君から「いい定理ができたので発表したい」と連絡がありました。18歳で院生であることに驚きましたが、彼の発表内容を知ってもっと驚きました。内容は以下の通りです。
 「紙に勝手な形をした多角形(どんな複雑な形でもよい)が描かれているとする。このとき、その紙を何度か折り、裁断機でたった1回切断すると、その多角形を紙からスッポリと切りだすことができる」
 この定理の特殊な場合は江戸時代の書物『和国知恵較』でも「三階菱の一刀斬(き)り問題」として紹介されています。上述のエリック君の定理のすごいところは、千差万別、無数にある「どんな多角形(線分で囲まれた図形ならへこんでいても可)」でも一刀斬りが可能であることを証明した点です。
 星形の一刀斬りの仕方を例示してみました。読者のみなさんも、あなたの好きな多角形を描いて、一刀斬りに挑戦してみてください。(東海大教育開発研究所長)

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