2015年4月29日水曜日

(35)交通渋滞と待ち行列



2008.9.23 08:56
 先日、新幹線に乗り遅れてしまいました。チケット購入の際、みどりの窓口で予想以上の時間を要したからです。多くの人が窓口に殺到すると、対応が遅れて行列ができます。窓口の個数に応じて、どのくらい人が並び、どのくらい待たされるかを解明するのが「待ち行列理論」です。この理論が威力を発揮する事象が日常生活の中にたくさんあります。
 例えば、スーパーマーケットのレジや駅の改札口、込み合う道路の車線、高速道路の料金所、飛行機の離着陸や交通信号、多数のエレベーターの昇降など。今回は、交通渋滞について解説しましょう。
 道路交通を考えるとき、基本になるのは車の交通量です。まず、場所と時間をどこかに決めて、そこを通過する車の台数を数えます。これが、その地点の交通量qです。この交通量が多くなると、快適な速度で走ろうとしても、ほかの車に邪魔されて思い通りに走れません。こうして速度は必然的に低下します。
 図1はこの関係を示したもので、横軸は交通量、縦軸は走行速度です。ただし簡単にするため、道路は1車線としました。例えば時速90キロで走りたいとき、ほかに車が1台もなければ、その速度で走れます。これが左端の縦軸の値で、右に進むにつれて速度は次第に低下します。交通量が1600台くらいで55キロとなり、1700台くらいで完全に停止してしまいます。これがその道路の交通容量です。実際の交通量と交通容量との比を「トラフィック密度」と呼び、待ち行列理論ではpで表します。このことから、pが1未満でないと道路は完全なまひ状態になってしまいます。
 では、pが1未満なら順調かというと、そんなことはありません。車はいつも同じ状態で走るとは限らないので、その揺らぎが影響し、pが1近くでは自動車が何台も数珠つながりになり、俗にいう団子状態が起こります。図2はそれを示したもので、pが1に近づくにつれて、団子の台数が急速に増えることが見てとれます。正確には、1からpを引いた値を交通量の「余裕度」と呼び、交通渋滞の起こりやすさは余裕度に反比例することが分かっています。
 このことを考慮して、高速道路への車の入場を制限するのです。(東海大教育開発研究所長)

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