2015年4月29日水曜日

(33)高校野球とポアソン分布



2008.9.2 07:08
 今年は北京五輪の影響で、甲子園の高校野球の影が薄くなってしまった気がします。それでも、日々熱戦が繰り広げられ、数多くのヒーローも誕生し、多くの感動をもたらしたことは例年と変わりません。今回はこの高校野球大会の結果を素材にしましょう。
 「どんな混沌(こんとん)とした世界の中にも、何らかの秩序が潜んでいる」ことを示唆する理論の一つに「ポアソン分布」があります。ポアソン分布は「めったに起こらないこと」、例えば1年間に馬に蹴(け)られて死ぬ兵士の数、年間に地震などの災害がやって来る回数などを予測しているのです。
 夏の甲子園には全国の地区大会を勝ち抜いた55校が出場しました。1試合行うと1校が敗退するので1回戦から決勝戦まで合計54回の試合が行われたことになります。各試合における逆転および勝ち越しの合計数(この数を逆転数と呼ぶことにします)を調べてみました。ただし、先制点は勝ち越しとはみなさないものとします。表1は智弁学園と近江の得点表ですが、ここでは3イニングに近江の逆転があり、7イニングに智弁の勝ち越しがあり逆転数は2。手に汗握るシーソーゲームほど、この数が大きいことになります。54試合のそれぞれについて逆転数を求め、まとめたものが表2です。ちなみに、逆転数が4の試合は清峰と東邦の対戦だけでした。
 ポアソン分布の式で計算して、得られた理論値を表2の右欄に示しました。この表をみると、実際の逆転数を的確に予測していることに気が付くはずです。
 しかし、この理論では、この例のように全体の状況を予測することはできても、ある特定の試合において何回の逆転があるのかを予測することはできません。(東海大教育開発研究所長)

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