2015年4月29日水曜日

(34)歯車と曲線



2008.9.9 07:56
 日常生活で見慣れた曲線が、意外な形で歯車の設計に利用されている例を見てみましょう。
 図1は歯車の一部を拡大したもので、噛(か)み合っているどの歯についても、うまい具合に1点だけが接触しています。ただし、これは断面図なので、正確には直線で接触しているというべきかもしれません。スムーズに回転する歯車の歯形を決める曲線は、数学的にきちんと計算したものでなければなりません。では、どんな曲線がいいのでしょうか。
 これには、歯車が次の2つの性質を満たす必要があります。第1は噛み合っている2つの歯がいつも1点で接触することです。これは前述の通りです。第2は歯車の回転につれて、その接点が滑らか(連続的)に移動していくことです。
 この2つの性質を満たすと、一方の歯車から他方の歯車へスムーズに力が伝わっていくのです。この性質を満たす曲線として、いくつかのものが考えられますが、インボリュート曲線サイクロイド曲線はその代表です。面白いことに、この2つの曲線は日常生活のなかでも頻繁に見ることができます。
 まず、図2のように、円形の糸巻きから、糸をピンと引っ張りながら、糸をゆっくりほどいていきます。すると、糸の先端は図2のような曲線を描きます。これがインボリュート曲線で、これを図3のように利用すれば、立派な歯車ができます。これはインボリュート歯車と呼ばれるもので、鉛筆削り器やパソコンのプリンターなどに見られます。
 次に、走っている自転車がガムを踏むと、タイヤに張り付いたガムは図4のような曲線を描きます。これがサイクロイド曲線で、やはり立派な歯車になります。これはサイクロイド歯車と呼ばれるもので、主に時計などに利用されています。(東海大教育開発研究所長)

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